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これまで2回にわたり、国の医療DX政策【医療DX令和ビジョン2030】の解説をしてきました。その中でも、3つの骨格の一つとされる電子カルテの標準化は医療機関において重要なテーマになります。
本記事では、一般科病院と精神科病院における電子カルテ導入の現状を比較し、国や自治体が示している電子カルテの方向性について整理いたします。
まずは一般科における電子カルテの普及状況を確認します。国は2030年までに概ねすべての医療機関で電子カルテの導入を目指しています。これには、精神科病院も含まれます。
厚生労働省の医療施設調査では以下のようになっています。
令和5年時点で大規模病院では電子カルテの普及が進む一方、200床未満の病院では半数前後にとどまっています。

※一般病院とは、病院のうち、精神科病床のみを有する病院及び結核病床のみを有する病院を除く
引用 第26回 健康・医療・介護情報利活用検討会
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001608407.pdf
また日本医師会において実施された、全国の紙カルテ利用中の診療所に対するアンケート調査では以下が示されています。

引用 公益社団法人 日本医師会 紙カルテ利用の診療所の電子化対応可能性に関する調査
https://www.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20250806_2.pdf
今後の電子カルテの導入について、「導入不可能で現行の紙カルテのまま運用する」という回答が54.2%であり、「国の標準型電子カルテの導入を検討している」のは10.0%に留まっています。
このうち「導入不可能」の回答にはユーザーにあたる医師が高齢であるという点が関係しています。その他、導入が難しい理由として以下が挙げられます。
・ITに不慣れで電子カルテ操作に時間がかかる
・導入費用が高額
・導入しても数年しか使用する見込みがない
これらの理由により、診察に支障が生じるのではないかという懸念があり「国の進める医療DXは無理なく導入・維持ができる環境を整える必要がある」と日本医師会は指摘しています。
あくまでも診療所に限定したアンケートではありますが、紙カルテから電子カルテに移行する上での懸念点としては抑えておきたい重要なポイントです。
では、精神科病院においては実際にどの程度導入が進んでいるのでしょうか。複数の調査を順に見ていきましょう。
ここでは、精神科病院に焦点を当てて導入率を整理します。都内の病院の病床規模別・病床の種類別の電子カルテ導入率について、東京都保健医療局の調査では以下のような報告があります。

※令和7年医療機能情報定期報告
引用 https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/hokeniryo/2025-09-16-134405-750
上記では精神科病床と療養病床のみを有する病院は導入率が36.4%で、精神科単科の病院では46.9%であり、50%を切る結果となっています。
また厚生労働省の中央社会保険医療協議会(令和5年3月)の報告では、東京都に限定しない精神科の全体導入率が51.5%と示されています。

引用 中央社会保険医療協議会 令和5年3月22日 総3-1
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001075451.pdf
これらの結果から、精神科病院は一般科と比較すると、導入率には差があることがわかります。
紙カルテから電子カルテへの移行が難しいと感じる理由は前項で述べましたが、診察に支障が生じる可能性があることは精神科にとって大きなデメリットとなります。
しかし医療情報を電子化することは病院や患者にとって、デメリットだけではないとされています。最後に電子カルテを導入することが、病院や患者にどのように影響するのかを見ていきましょう。
ここでは、国の施策として電子カルテの導入を進める点について確認していきます。
1で電子カルテ導入には様々な懸念点があることを述べましたが、それでも国や自治体が電子カルテの導入を推進するのは、それ以上のメリットがあるからです。
東京都保健医療局は以下を電子カルテ導入のメリットとして挙げています。
・電子カルテは医療情報共有の基盤であり、医療機関間や患者自身が医療情報を共有することで、医療の質への安心感が向上する。
・国が進めている電子カルテ情報共有サービスにより情報共有の取組が今後進むことが期待されるほか、デジタルツールとの連携で待ち時間削減など満足度向上につながる。
・人材確保や業務効率化など電子カルテは医療機関にもメリットがあり、効率的な医療提供に寄与する。
引用 令和7年度東京都医療DX推進協議会第1回電子カルテ部会資料
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/hokeniryo/2025-11-18-120106-696
導入のメリットは患者・医療機関ともにあると示されていますが、医師の高齢化や導入コスト、そして何より診察の難しさなど現場で挙げられている懸念点をどのように整理し、段階的に対応していくかが今後の検討項目となります。
